14.訴状の書き方(その1) できるだけ簡単にしよう


 ご存知の通り、裁判と言うものは訴状を裁判所に出すところから始まります。
「訴状」なんて言うと、いかにも弁護士しか書けないややこしそうなものに思えますが(私もそう思っていたんですがね)、書いてみればなんていうことはない、敷金返還程度の裁判であれば誰でも書けます。書式は一応決まっていますが、住民票を取るのと余り変わりはなく、たいして面倒なものではありません。
 長文を書くのが苦手だと言う人も少なくないでしょうが、そもそも訴状と言うものは簡潔に書いたほうが裁判官に喜ばれます。文章の表現だって紋切り型の典型みたいなものですから、もらい物のお礼状に気を使うよりは簡単だと思って間違いはないでしょう。

 ただ、「敷金返還程度」と書きましたが、ここがちょっとしたポイントです。
 自分で裁判を起こす場合、そこは素人ですから、できる限り簡単な裁判にした方がお得なのは間違いありません。
 どういうことかと言いますと、たとえば私の場合、もともと「敷金なんか返ってこないもんだ」と思っていたところに、まったく意味不明のカネを要求されたわけですから、本来の私の意図とすれば、「そう言うカネを支払ういわれはない」と言う裁判を起こしたいというのが本筋なわけです。
 ところがこれをそのまま裁判にしますと、被告が主張する債務は自分には存在しないという「債務の不存在確認」という裁判を起こすことになります。そうするとこれは民法上の債務理論であるとかそういう非常にややこしく、かつ高度な法律知識が要求される裁判になってしまって、素人が簡単に手を出せる範囲のものではなくなってしまうのです。

 それではやっぱり裁判は素人には無理なのかというと、そうではありません。
 前述したように、「敷金返還程度」の裁判にしてしまえばよいのです。
 つまり、「私の預けた敷金を返せ」という主張だけしてそれが裁判で認められれば、自動的にそれ以上の請求は無効だと言う判断となり、結果としては債務の不存在確認をしたと同じ事になります。
(注・この場合本当は、受動債権だのなんだのと、敷金を相殺するという意味付けを訴状で書くべきなんでしょうが、こちらは素人の本人訴訟です。そのあたりの専門的なことは裁判が始まれば裁判官が直接口頭で確認してくれますので、心配することはありません。)

 結果が同じであれば、簡単な方法を取りましょう。 さて次回は、とっても大事で簡単な訴状の書式、「これをマスターすれば貴方も司法書士」(んな訳はない)に行きましょう。

(続く)